ACIDMAN “新世界”(アルバム) レビュー
怒涛の ALMA ライブツアーから2年半ほど、ついに9枚目のアルバム「新世界」が発売されました!
8枚目のアルバム、ALMA から随分と日にちが経ちました。その後、この ALMA で一区切りがついたと感じたことから、ベストアルバムやベストインスト集も発売されました。2012年で一区切りがつくことについて、「Ride the wave」の中で以下の歌詞があります:
さあ その感覚 共鳴しているミュージック
2012 繋ぐアトランティスへ
2012年を境に人間の感覚が変わるというマヤ文明の予言を歌ったもののようですが(Lmaga.jp のインタビューはこちら)、奇しくも彼らの音楽性の境ともなったようです。
アルバムの中心となる「アルケミスト」

「アルケミスト」のPV撮影地、モロッコでの1枚
小説「アルケミスト」について
パウロ・コエーリョ氏の有名な小説「アルケミスト」から想起されて作られたリードシングル曲「アルケミスト」は、オリジナルカバーでアルバム「新世界」初回限定版に付属してきました。これだけでもACIDMANの曲「アルケミスト」がこのアルバムのキー曲だと分かるのではないでしょうか。
小説「アルケミスト」は以前知り合いに勧められて読んでいて、繰り返し読んでいます。運命に導かれ助けられつつも、最後は自らの力を試される少年のお話で、アフリカの砂漠を超えるストーリーは、ACIDMAN のシングル曲「アルケミスト」の PV にも生かされています。
小説「アルケミスト」で一番好きな一節は、主人公が旅中で出会ったオアシスに住む恋人が、主人公の少年のことを思う次の一節です:
その日からは、砂漠の方が大切になった。彼女は毎日砂漠を眺め、少年がどの星に従って宝物を探しているのか、想像するのだった。そして風に乗せてキスを送り、その風が少年のほほにふれてほしいと思った。彼に、自分は生きていると伝えてほしかった。彼を待っていると伝えてほしかった。彼女は、宝物を探しにいった勇気ある若者を待っている女だった。その日以来、砂漠は彼女にとって、たった一つのことを意味するようになった。彼が帰ってくるという希望だった。
過酷な環境の砂漠が彼女にとってオアシスよりも大切になるという表現が、彼女がいかに主人公の少年のことを愛しているかが分かる素敵な表現だと感じました。アルバム「新世界」をより楽しむために、小説「アルケミスト」の方もぜひ読んでみてください。
曲「アルケミスト」について
ACIDMAN の曲「アルケミスト」は、小説を想起させるような歌詞がちりばめられています。何より素晴らしいのがDメロからの盛り上がりで、同じサビでもDメロを通じて壮大さに拍車がかかり、小説のクライマックスが思い起こされます。歌詞には ACIDMAN らしさも残ります。小説では宝物を求めていたのが、ACIDMAN が歌う「アルケミスト」では光を求めていたり、「さあ もう一度だけ 旅を始めよう」という小説には見られない、何かをやりなおそうという主張が見られます。高度化した現代社会を批判的にとらえる彼らならではの表現ですが、ACIDMAN の歌う世界観と、この小説「アルケミスト」の描いている世界が近いためか違和感はありません。
アルバムでは「アルケミスト」の後に「風追い人(前編)」「風追い人(後編)」が続きます。「風追い人(前編)」は「アルケミスト」のメロディーに後ろ髪を引かれたような切ないメロディーのインストです。「風追い人(前編)」はピアノとして坂本龍一さんも参加され、MV も作られるなど、気合の入ったインストです。このエントリーのトップに掲載した写真がその MV の撮影地で、哀愁漂うメロディーとムービーが胸を打つ、アーティスティックな MV になっています。
もう1つのリードシングル「新世界」
アルバム「新世界」のもう1つのリードシングルが、シングル曲「新世界」。シングル曲のタイトルがそのままアルバムタイトルになっています。アルバム収録曲が全て決まった時、改めて聞いて、この「新世界」というタイトルがアルバムにもふさわしいと感じたそうです。アッパーチューンで聞きやすく、明るい曲がアルバムのタイトルに来るのは珍しい気がしましたが、アルバムの「新世界」の楽曲は明るく前向きな曲が多く、「多くの人に聞いてもらって、歌詞を読んでもらって、思いを伝えたい」とインタビュー等で答えていることから、分かりやすく、素直な表現になったのでしょう。世界が変わると言われる2013年以降も、明るい世界を築こうという意思表示なのだと思います。
全体を通じて
「アルケミスト」「風追い人」、そして「ファンタジア」を彷彿とさせる「白光」やイントロ「gen to」/アウトロ「to gen」など、メロディカルで美しい楽曲が多いアルバムに仕上がっています。新しい世界は美しくあるべきだと言わんばかりの、素敵なアルバムに仕上がっています。
ゴリゴリのロックを求めている方だと少し物足りないかもしれませんが、それでも「新世界」や「NO.6」などロック調な曲も収録されていますので、初めての人でも、前からのファンの方にも是非聴いてほしい1枚です。
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